若手俳優のオタクたちがミナミノツドイを語る

ミナミノツドイチャンネル登録者数20万人おめでとうございます！

昨年11月に若手俳優のオタクがミナミノツドイにハマる - しがない🐏という記事を書いてから早半年ちょっとが経過したので、この機会に若手俳優／Youtuber・実況者を「推す」ことの違いについて、そしてミナツドの魅力について改めて考えてみました。
ただ私がひとりで語っても面白い内容に出来なさそうだったので、同じ界隈から同じ時期にミナツドにハマったリスナー・むらばりさんにお付き合いいただき、対談形式でまとめています。
彼女と出会ってから約半年、ほぼ毎週のようにミナツドを肴に飲み交わす我々の居酒屋の雰囲気（？）をお楽しみください。

※この記事の内容は、あくまで個人の見解・個人の価値観に基づきお話をしています。
※ここでの若手俳優は舞台を中心に活躍する男性の若手俳優を指します。

＜あまりにも長いので目次＞

話してる人

むらばり
バリバリの営業マン。Youtuberや実況者のイベントに積極的に足を運び、推しへの造詣を深める努力を惜しまない。配信中のコメントは主に挨拶のみ、スパチャ・チアーはするよ派。メンバーシップ・サブスクライブ登録済。ゲームは全くやらない。

mofu
しがない企画制作職。推しができると、その業界・市場や事務所のことを詳しく知りたがる。配信中のコメントもスパチャ・チアーもするよ派。メンバーシップ・サブスクライブ登録済。流行りのアプリゲームだけは一応手を出す。

若手俳優オタクとしての「推し」

むらばり（以下む）　私の推しは、女性アイドルグループAのSちゃんと俳優のNさんの二人。Sちゃんに関しては、私はAのオタになってから２年間ずっと在宅(※)で、そのときはAのみんなのことが好きで写真買うにしても時によってバラバラだったりしたんですけど。突然Sちゃんにぱっと決まって、そこから急激に推しになって。
　今回話をするにあたって、何があってそうなったのかなって思い出してみたら、まあ色々ありましたね。
※在宅：イベントなどに行かずに自宅で応援していること。類義語に「茶の間」がある。

mofu（以下mo）　推しをなんで推してるのかって改めて考えることないですよね。推しは推しだから。

む　気付いたら推してるじゃないですか。このYoutubeの界隈における推し定義ってなんなんだろう、推しという対象が推しになる瞬間がなんなのかなって考えたんですよ。
　私の場合、推しが推しになる瞬間は「自分がその人にとってのオタクになったとき」で。すごい抽象的な考え方なんですけど、相手の活動の食物連鎖の中に入ったときが私が相手にとってのオタクになった瞬間であり、その瞬間が来たときに相手が推しになるなって思うんですよ。お金を使ってるかどうか、ちゃんと現場(※)に行ってるかどうかはその表現のひとつ。
　そういう私の考え方でいうと、在宅時代はオタクというよりはファンって感じ(※)。だからその２年間は、推しがいなかったのかもしれない。接触してるしてないとかどれだけ行ってるとか●回以上とかじゃなくて、その環の中に入れたかどうかなので。
※現場：イベント、ライブ、舞台などリアル会場で実施されるアイドルや俳優の活動の場。
※オタクとファン：ここでは、その対象を応援している人たちが「ファン」、その応援活動において並々ならぬ情熱を注ぐ人たちが「オタク」。

mo　その感覚なんとなく分かります。多分、その人が自分に向けて売ってる、それを自分がお金を払って享受してるって思えるというか。

む　でも、その考え方をミナツドに当てはめて考えるとかなり難しくて。Youtubeのサービスの形態だと、動画を見てるだけでもその環に入れたと言えなくもないじゃないですか。だから、どこまでがリスナーでどういうのが推しって言えるのか難しいなと思って。
　私にはその環に入れている実感がないから、今はミナツドの誰が推しって言えないのかなって思いますね。

mo　「お金を払う・払わない」がないだけで、かなり難しいですよね。
　私も考えたんですよ、なんで推しを推すようになったんだろうって。いま俳優のKくんが一番推し歴が長いんですけど、そもそも彼を推すようになる前に彼の初舞台を見て「その作品のキャスト全員可愛いから全員推しだ！」って全員の現場をぜんぶ踏むようになったんです。
　それなのに、Kくんだけが最終的に推しになった理由は、単純にKくんの芝居が好きだったからなんですよね。私はやっぱり商品ありきエンタメありきの思考で、「これを作る人が好き」「これを作る人の作品は全部見たい」って思う人が推しになるんだって改めて分かりました。だから、むらばりさんとは逆にミナツドにハマった理由が分かりやすい。

む　求めている要素が割と明確なんですね。

mo　もちろん「好きなものを作った好きな人に対価を払いたい」までがセットで推しなんですけど。多分お金を払うことが私にとっての彼への評価で、その払うものの一つであるチケット代(※)を対価として通いたくなるようなものを作る人が私の推しなんですよね。
※チケット代：若手俳優が出演する舞台のチケット代は6,000～12,000円が平均値。

む　推すモチベーションがわかりやすいですね。チケット代という価格で行きたいと思えるか思えないかで推してるんだなって実感できる。

mo　だから、その人が作るものを面白いと感じなくなったら、それは私が推しを降りる(※)ときなんですよ。人間性に惹かれていてもそこが噛み合わないと推しではなくなっちゃう。
※降りる：もっとも応援していた対象のオタクを辞めること

む　あまり聞かないタイプですね（笑）。割と人ありきの人のほうが多いし、私もどっちかっていうと人による派だと思いますし。
　私は、平たく言うとオタクが好きな「ギャップがある人」に弱いんですよね。

mo　推しになる人もそういうタイプが多い？

む　たとえば、Sちゃんって元々すごいハチャメチャな子なんですよ。言ってることがよく分かんないし、漢字読めないし、頭おかしいんです（笑）。
　だけど、Aの中で一番歌が上手い子とユニットで歌っているのを見たときに「こんなことができるんだ」ってびっくりして。それで気になってブログとか見たら、ツアー中での喉の調子が悪くて……とかの苦悩を訳が分からない言葉なりに（笑）綴っていて、「そういう苦悩があって、そういうことを考えてたんだ」って思えて。そういう「人のプロ」を見るのが好きなんですよね。
　Nさんのときも、一番最初に彼を見た2.5次元舞台(※)で「めちゃめちゃ歌が上手い人がいる」と気になって。それで当時彼が出ている動画配信番組を見たんですけど、そういうコンテンツってパーソナルな喋りが出るじゃないですか。彼もぜんぜん喋れないんですよ（笑）。自分の舞台の宣伝もできなければ進行もできないしうまく返すこともできない。「あ、ポンコツ」みたいな。
　でも、「この人は舞台でしか生きていけないし、自分でもそう分かってるからこんなにすごいんだな」って思って。じゃあ彼が磨くその力で、他にどういうものを生み出してるんだろうっていうのが気になったんですよね。実際そのときは「この人年上なのに全然やばいじゃん」って気になっただけなんですけど、そのあと歌で採用された舞台作品でも、とにかく劇中での歌がよかったんですよ。その表現にだけ特化して生きてきたんだなってことが分かった。
　それしかない人たちの一芸ってすごいじゃないですか。
※2.5次元舞台：広義では漫画・アニメ・ゲームなどを原作・原案とした演劇作品のこと。どの作品を2.5と呼ぶかは人により意見が分かれるところ。

mo　自分でもそれしかないって分かってるからこそ、そこに対して真面目だし。

む　そうなんですよ、実際に本人もそう言ってて。一回大学入ってバイトやってたりしてたんですけど、やっぱり社会には出れないと気づいて大学も中退して。「自分にはこれしかできないって思った」って言っていて。そこの経過をリアルタイムで見れてたら楽しかったんだろうなって思いますよね。多分、彼の覚悟が変わったと思うので。
　とにかく、そういうちょっと頭がおかしい人の本気を見るのが好きなんですよね、きっと。

mo　それ、ミナツドで比較的当てはまりそうな人がいるのでは（笑）。

む　そう。いるんですよね、そういう人が（笑）。

mo　今聞きながら「むらばりさんの推し、やっぱりそういうタイプだよね！」って思いましたもん（笑）。不意に垣間見える真面目さとか、おバカに見える中の才能とか、そういうカリスマが好き。

む　そうなんですよね。それが世間に見つかってるか見つかってないかは市場の母数が違うからってだけで。だからAの中ではSちゃんが一番人気だし。
　でも、自分の中でちょっと意外に思ってるんですけど、このパターンだと私は分かりやすくKCさんに惹かれやすいじゃないですか。なのにあえて……（笑）。

mo　あえてね（笑）。でも分かります。KCさんは動画を見ていればそのギャップがある程度見えるけど、てんてんさんはなかなか見えてこない。ギャップがあるのは確かなのに、そこが目に見えない。

む　だから、たまにてんてんさんから真っ当なツッコミがあると「やだ～（喜）」ってなっちゃう。もっと外とのコラボに出てほしいですよね。マイクラDBDコラボ(※)のときは交流をしている姿をあまり見られなかったけど、挨拶とか終わったあとのくだりとかを見てみたい。
　……とにかく、そういうポンコツとかハチャメチャの中にある根底のプロ意識とか知的さみたいなのを垣間見せられると「純粋にそれだけじゃないんだな」って。そういうところに、推しの共通点はあるのかなと思いますね。
※てんてんがコラボでヤラかしてミナツド解散!?!?[マイクラ版Dead by Daylightコラボ#1] youtu.be

mo　私も、さっきはああ言いましたけど、推しに性格的な共通点がないわけではないんですよ。もちろん作品ありきではあるんですけど。
　Kくんを例にすると、彼は本当にストイックなので、自分に絶対満足をしないんですよね。エンタメとか芝居が誰よりも好きで、それに対して愛情と情熱を注いでめちゃめちゃ頑張るんですけど、理想がすごく高いし、プライドもすごく高い。自分が努力していることを人にあまり知られたくなければ、理想が常に更新されていくので実現されることもほとんどない。
　彼の初主演舞台のときに、共演者がキャリアある役者たちばっかりな分、自身がありたい理想もすごく高かったみたいで。その中で座長として支えなきゃいけないってプレッシャーもある。だから、その舞台でいざ観客や世間から評価を受けても、これは自分の力ではなく周りの力であるって言って決して自分を認めなかった。「まだ自分は理想に到達できていない」「周りの人たちがみんなすごいのに自分はまだまだだ」っていうのが先にでちゃう。すごく自己肯定感が低いけどプライドは高い、みたいな。
　あと、推しのもうひとつの共通点は、以前推してた俳優のEくんに顕著なんですけど、人前でピエロになりがちなところですかね。真面目なところでふざけちゃうとか、悪い空気を変えるために積極的にボケにいくとか。周囲からはそのままのイメージで捉えられますけど、でも実は空気読むのが上手くて気を遣いすぎるばかりに、読んだ空気や周囲を取り巻く感情に対して苦しんで、結果色々な形で自己を犠牲にして解決する（笑）。

む　あれ、知ってる、私その現象を最近どこかでみたことあるな（笑）。

mo　ですよね（笑）。だから、どこまで話したらいいのかなって悩むんですけど。
　とにかく、周りの空気を読んだり、周りを尊敬したり、自分より周囲に目を向ける過ぎる謙虚さが推しに共通しているかなと。私がエンタメを好きだし、私自身もそういう業界の仕事をしているから、それに対してはひたむきに頑張ってほしいというか、真剣に頑張ってくれる人じゃないと好きになれないんだなとは思います。
　あと、多分、自分に似てるところも感じてるんですよね。自己を犠牲にしがちなところとか（笑）。でも自分に似てるけど自分はそこまで頑張れないから、お金を払って応援するっていう、ある種の自己投影的要素が推しに対してあるのかな。なりたくてもなれない自分なのかも……って思って、考えながらすごい恥ずかしくなりました（笑）。

む　でも変な話ですけど、mofuさんの推しのタイプを推す場合って、ファン側はその謙虚の裏側に隠された気質に気づかないほうが楽だったりしますよね。

mo　多分、本人も気づかれたくない。

む　そうですよね！　「絶対無理してるよー」って言われるのが本人的にはね……。

mo　嫌だとは思いますね。多分表に見せているイメージそのままに思われたほうが楽なんだろうなって。

む　でも私たちは、それを「本当は気づいてほしいと思ってる」「気づいてもらえたら救われるんじゃないか」って思うじゃないですか。本人は求めてないかもしれないけど。

mo　そうなんですよね～。そういえば、その「救われるんじゃないか」って発想で、オタクめんどくさいなって思ったことがあったんです。
　私、人に悟られたくないタイプがたまに舞台上で弱音を吐くとか周りから努力を認められるみたいな光景を見るのがすごい好きなんです。
　でも、話は逸れるんですけど、Eくんが結婚したときに私は彼から降りたんですね。実は、結婚発表の少し前のトークショーで、彼が今まで話すことを避けていたような、聞いたこともないトラウマの話を突然し始めたことがあって。そのとき、この人は多分心の平穏をどこかで得られるようになったんだな、って感じたんです。それは、自分を支えてくれる、認めてくれる相手、自分を認めてもいいと思わせてくれる相手が傍にいてくれるようになったからなんだなって発表されたときに納得して。
　でも、勝手な話なんですけど、結果として、彼は私が見たいエンタメを提供する人ではなくなってしまった。別に幸せになってくれたことは嬉しいんですけど、推しとして考えれば、自分のプライドを捨てなくてもいい、理想は高くあっていい、ただひたすらに追求し続けてほしいみたいなことを思ってしまう。救われたら楽になるだろうなと思うけど、救われることを本当は求めていない（笑）。逆に、そこだけに入れ込んで、執着している人だからこそ、私は推しのことが好きなんだなって。
　むらばりさんの推しみたいな才能突出型って、そうやって変化することってあんまりないかと思うんですけど、いままで推しから降りたことってあったんですか？

む　降りるかぁ……。新たな出会いがない状態で降りるはなかったかもしれないですね。でも推しの活動をするにあたって、その現場の環境がいやすいかどうかってかなり影響あるじゃないですか。だから、オタクが嫌いで降りたのは２回ぐらいあります。

mo　どういうタイプのオタクが多かったんですか？

む　「自分が一番」「推してる自分が好き」とかで周りが見えなくなる人というか。
　一時期あるアーティストを推してたとき、現場もあるからオタクと接する機会が多かったんですけど、そういうスタンスのオタク同士のやりとりにうんざりしていて、イベントのときもそういうのが透けて見える姿が嫌いで。私もこれになってしまうのだろうか、それならここにいたくないな、向こうから見るこの中の一部になりたくないなって思って、消えましたね。

mo　確かに、むらばりさん的に推すことは食物連鎖の一部になることだから。

む　そうなんですよ。でも、ちゃんとハマったら長い方。私の推しは本当にその才能だけしかない人たちだから活動もあんまり短くないんですよね。本人もそれしかないと思ってるので長くやってくれる。
　アイドルって、進学とかで割とすぐ辞めちゃうじゃないですか。でも辞めちゃう子って、普通の大学生活にも馴染める子なんですよ。私の推したちはそれしかないと本人たちが自覚してるので、進学の心配もしてなかったです。

mo　そう考えると、私の推しの共通点は若さの特性かも。年を取るとそこまでのことをできなくなってくるから、ある程度賞味期限がある。

む　それこそ結婚とかしたら、その要素は少なからず薄れますもんね。でも Kくんに関していえば、女性に承認を求めてなさそうじゃないですか？　なんだかよく分からない相手ぐらいに思ってそう。

mo　多分自分と同じような立場で生きてきた先人たちが認めてくれることが重要であって、認めてほしい理想も高いんだと思います。そう考えると、彼に関しては心の安定を得ることって簡単じゃないのかも。

む　でも、いいものが見れますよね。飽きないだろうし。

mo　そうなんですよね。彼が苦しんだ分だけ期待以上のものを見せてくれるなって。

む　多分、そういうタイプってファンに対して余計なサービスをしないじゃないですか。だからファン的な意味でも環境は良さそうですよね。物足りない人はすぐいなくなるし、いわゆるファンサとか、キャピキャピして応援したい人たちは多分気になったとしても続かない。

mo　悪い言い方かもしれないけど、ファンの声が響かない。そういうのを求める人は難しいかもですね。

む　そういうタイプの人って、ファンたちをどういうものだと捉えてるんですかね。

mo　多分ですけど「お金を払って自分を支えてくれる人」だと思います。払ってもらってる分、自分のパフォーマンスで返さなきゃいけない。彼としてもギブアンドテイク。

む　ファンは導くものだとは思ってないってことですね。

mo　あくまで提供したものを見てくれる人。こっちが好き勝手言っても向こうは自分のスタンスで動いてくれるしね。

む　私の推しはオタクのことをどう考えてるんだろう……。前のバースデーイベントのときに「自分のことを応援してくれている人ってこんなにいたんだ」って言われてたことがあって。ショックだったんですよ。「行ってるじゃん、いつも。何が足りないの」って。本人がどう考えてるのかなって不思議に思いました。

mo　私もさっき言ったように推測はしてるけど、実際はどうか分からないですし。

む　リップサービス的なのは求めていないとはいえ、相手にどう捉えられているかはこっちの生命に関わってきますよね（笑）。

ミナツドを箱推しする私たちと「推し」の定義

む　でもミナツドの場合は、ファンの声がダイレクトに届くから、どう捉えられているかと考えることもあまりないというか。人としての付き合いみたいになってしまうから、よく分からないですよね。

mo　私たちはいままでそうやって応援してきたことがないじゃないですか。入り待ち・出待ち(※)をした経験もないからダイレクトに届く声というものもないし、推しと私たちはお金を介在させて成立する関係でしかなくて。でも、ミナツドではお金の何のやり取りもない。
※入り待ち・出待ち：出演者に会うために入退場を会場出入り口で待つこと。若手俳優の界隈では推奨しない／禁止している現場・事務所が多い。

む　だから後払い的なお金を気休め程度に払わないとこちらの気が済まなくて、やっているだけであって。

mo　ギブアンドテイクさせてくれないんですよね。

む　Youtubeだからですよねきっと。再生すれば済む話。

mo　商業を謳ってやっているわけではないですし。

む　でもなんだかんだミナツドと今までの推しの共通はあったんですね（笑）。別世界とは言いつつ互いに通じるところはあった。

mo　でも私の場合、俳優の推しと違って複雑だなって思う。俳優の推しはひとりだから提供物を作ってるのも推しひとりなんですけど、ミナツドは作っているのが６人だから推しが誰だって言えない。その提供物の存在がありきの推しだから。

む　さっきの人間性の話だと、分かりやすくその要素が強い人はこの人って繋がりはしますけどね。

mo　人間性的には完全にそうだけど、かと言って単推し(※)にならないのは、作っている人がひとりじゃないっていうのが大きいんですよね。
※単推し：グループ内のひとりのメンバーを推すこと。広義には、ひとりの対象だけを推すこと。

む　いろんな要素が組み合わさってこの形になってるから、６人じゃないとそうならない。そう考えるとみんなが箱推しなのも確かにそうかもしれないですよね。

mo　みんな、彼らが作ってるものが好きだから。そこの中でひとり推しを決めるって、結局人間的に誰が好きかになってくるし。

む　なりますよね、これができるこの人が好きってスキル的な面に惹かれない限りは。

mo　いまは個別の配信での提供があるから、それを見て好きになったっていうことだったら違うのかもしれないけど。

む　それこそ環境重視の人とかだったら「こっちの配信の空気が好き」とかもあるかもしれないですしね。でも結局その空気を出すのもその人のパーソナリティですから。

mo　そもそも作ってるの売り物じゃないわ、作ってるのひとりじゃないわ……今までと環境が違いすぎる。

む　私の定義で推しといえる要素がないというか……それこそ、気になる人はいますけど、彼を個として見たときの連鎖の中に私はいないじゃないですか。

mo　KCさんとてんてんさんに関しては個別の配信がないから、むらばりさんの感覚的には何をもって推しというのかが一層難しいですよね。

む　たとえばてんてんさんを推す、でも私はその人の活動の中にいない、入りようがない。Twitchのアカウントをひとりで作ってて、そこに金を投げ込めるんだったらそれが本人の手に直接渡り……という気には少なからずなれるかもしれないですけど、それすらもない。SNSとかでのアピールも別に環の中に入る手段の一種でないとなると何もできることがなく、私としては推しを推しにできるものがない。

mo　スパチャも結局６人宛だから、いくら「てんてんさんよかったです」と言っても、彼を推しとこちらが言える状態になった上でどうアピールするかだけの問題だし。かつ人間性で推しと言えるかというと、そこもほとんど見えない。

む　だから私はKCさんとてんてんさんがやってるシリーズが好きなんですよね。人間性とか出るじゃないですか。フレンドパークみたいなの(※)も好きだし。てんてんさんの巧妙と見せかけて荒い作りとか（笑）。何個クラフトできるかみたいな……ルールも雑だし（笑）。そう考えるとKCさんのほうが作り込んでるものが好きな人というか。
※自作のオリジナルゲームで相手を楽しませるゲーム[てんてん編] youtu.be

mo　でもKCさんも、言うて私たちが思うパーソナルは見えないですよね。

む　わかんないですよね。もっとKCさん発信で制作秘話とかが出てきたら違うんでしょうけど。「こういう方面から見てるんだ」とか「そういうアプローチね」みたいな。
　それがちょっと垣間見えるのが新生ミナツドの動画(※)ですよね。それも、TつぐさんがTwitchで裏を補正してくれたから私たちが想像することができたんですけど。どういうプロセスでああなったのかとかは大事ですよね。もっと気づけてないこともいっぱいあるはずだから、それも知りたい。
※ミナミノツドイ youtu.be

mo　推しのことを全部知りたい、知ってからじゃないと推しと言えないと思っている私たちにとっては、だから推したくても推せないんですよね。部分部分ではわかりますけど、一部分だけじゃ絶対に満足できないから。

む　動画見てればわかることじゃダメなんですよね。世に出てる情報は総ざらいしたうえで分からないのがあの二人だし。わかんないパーソナリティが多すぎる。

mo　まあ私はミナツドがミナツドである限り、いくらパーソナリティが明らかになっても箱推しにしかなれないんだと思いますけど（笑）。
　でも、そういうところからYoutubeにおける推しの定義を考えると、『自分の中で一番好き』ってことなんでしょうか。推しの定義から私たちのいた世界と本当に違いますね。

「推し」とファン・オタクの関係性

む　あと若手俳優界隈との一番の違いって、向こうから見たこちら側ですよね。個があるかないか。
　ミナツドも登録者が20万人もいるし普通に個がなくて当たり前の世界なんですけど、その個の存在を浮き立たせる環境が、たとえばTwitchとか、あるいはスパチャとかで作られているので。今までと全然違っていて、最初は衝撃と戸惑いでしかなかったですね。毎日が接触イベ(※)みたいな（笑）。
　それこそ私たちの元いた場所は無銭で席につかせてもらえないじゃないですか。パフォーマンスを見るのにお金という存在は当たり前。だから、Youtubeにおいていくら広告料とかがあったとしても、私たちは動画という作品を通して無料でパフォーマンスを見ているという感覚。
　たとえば２時間の作品を見るのに私たちの世界では１万円するとして、毎日の動画が10分でも既に累計時間は超えているじゃないですか。価値がどうであれ、それに比例するお金は払えてないなっていう認識がどのみちある。かつ、ただ舞台を見ているだけじゃなくて、舞台のあとに握手会もあり、個室でのイベントもあるみたいなことだし。生配信がありTwitchやツイキャスがありって（笑）。
※接触イベ：握手会やハイタッチ会など推しと触れ合うイベントのこと。

mo　「ホストちゃん(※)」で言うと、お金を払った太客だけが与えられるような機会が自然と作られている。
※ホストちゃん：舞台「私のホストちゃん」のこと。ホストに扮した俳優たちを舞台上でNo.1ホストにするため、観客がチケット代・グッズ購入で得られるポイントを通じて課金する。俳優が順位づけされるだけでなく、観客側も課金額でランキングされ、上位にランクインした『太客』は課金先の俳優と個別でコミュニケーションが取れるなどの特典が得られる。

む　「ホストちゃん」で言う太客のラインが金だけじゃない世界ですよね。「ホストちゃん」とかえぐいじゃないですか。何十万のお金を費やしてやっと太客になれるかなれないか、それも他のオタクとタイミングが被れば終わりなので。Youtubeの人たちからしたら考えられない世界、無機質と思われるでしょうけど。

mo　「ホストちゃん」だと客降り(※)の接客もお金をより払った人たちの座席でしか受けられないし。商業とそうでないかの違いも大きいですけど。
※客降り：舞台作品などで出演者が客席に降りてくる演出のこと

む　お金を払わないものは傍観するしかないですもんね。「ホストちゃん」でたとえるの闇が深すぎる（笑）。
　でも私たちがいたのは、そういうお金を払わないと見ることさえできない世界でしたもんね。だから「払ってないのにいいの？」みたいな衝撃がある。A席(※)なのに指差し(※)もらってるみたいな（笑）。
※A席：チケット代に応じて座席配置や特典の有無等が変わってくる現場において、一般的に、もっとも高額なS席よりも安い代わりにステージから遠い等の配置の座種。作品によっては、席種の数や名称が異なる場合もある。
※指差し：ステージ上にいる出演者が観客であるファンひとりに向けて指を差すこと。ファンサのひとつ。

mo　商業コンテンツでないものを応援するってそういうことなんでしょうけど、困惑でしかない。

む　商業じゃないって、つまりやめようと思えばやめられることだし、本人たちのスタンス次第でなくなれる、質がどうにでもなるものですもんね。

mo　私は、商業コンテンツにおいては「消費者はわがままであれ」と思うんですけど、商業でないこの世界ではクリエイターの意向や意志、プライドを尊重することも応援のひとつなのかなと感じますね。お金だけを払ったところで続けてくれるかどうか分からない。商業だったらお金を払えば評価や継続につながるけど、そうではない世界だから。

む　だから私たちが払ってるのは、申し訳程度の出席料、入場料と称するしかない。
　でもそう思うと、全然違う世界によくこんなにもハマれますよね（笑）。私自身はゲームに興味がないのにすごいなって思うんです。ゲームやらないし、興味もなかったのに、ゲームありきのゲーム実況者というのにハマる自分が不思議でならない。かといってパーソナリティだけに惹かれてるわけでもないだろうし。
　そう思うと、彼らのフィールドがそこにあるだけで、作り方とかそこに見える精神みたいなものが好きなんだろうなって思いますけど。

mo　あれ、むらばりさんはなんでミナツドにハマったんでしたっけ？

む　もともと人狼ゲームが好きでネット上で色んなものを見ている時期があって。そのときに、一番良くわかんない人狼ゲームが出てきちゃったっていう（笑）。
　でも最初はそんなに考えずに見てただけですね。一回気になってツイッターを見る、ツイッターを見たら配信がやっている、配信がやっていたら話を聞く、話を聞いたら「おや、気になる要素があるぞ」みたいな感じかな。私、『熱闘甲子園』みたいな番組が好きなんですよね、全然野球自体には興味ないんですけど。「そういうのがあったんだ」って感じられるのが好きで。
　しかもミナツドはバクステ(※)みたいな形で、裏をいい感じに小出しにするじゃないですか。笑いとして見せてはいますけど。
※バクステ：バックステージ。若手俳優界では、舞台の裏側を撮影した映像が作品本編とは別に特典映像として収録されたり、単独で発売されたりすることがよくある。

mo　確かにそうですよね。全部垂れ流してるわけじゃなくて、裏は裏で独立させているっていうか。バクステみたいな動画があるの衝撃でしたもん。

む　衝撃ですよね。でも「これが見たいやつ！」みたいな。

mo　我々的にはしっくりくるじゃないですか。完成品は完成品として、その背景は好きになった特典として別に見たいから。

む　私も、自分で見た舞台のDVDは座談会(※)から見るぐらい「どういう考えでそれをやっているか」とかを知るのが好きなので。こういうYoutubeの世界でもそれがあるっていうのは馴染みやすい要素のひとつではありますよね。
※座談会：文字通り、公演前後の俳優たちがスタジオなどに集まって作品や共演者等について語り合う姿を映像としておさめたもの。バクステのように舞台の公演DVDによく収録される。

mo　多分、エンタメの考え方が私たちと近いというか、やっぱり彼らもYoutubeネイティブ世代じゃないと思うんですよね。テレビ世代だし、そういうお金を払って見るものにも馴染みがある人たちだと思うから、完成品と裏側って当たり前に別なんですよ。

む　そして、しっかりとした裏表の構造は作品の世界観に対しての真摯な姿勢ゆえでもある。

mo　作品そのもので勝負しようというストイックな姿勢に今更ながらに痺れますね。だから今は生配信で行き当たりばったりのものはあんまりやらないし、Twitchやツイキャスと住み分けるのもそういうことかなって。

む　自分たちもそこに「商業コンテンツとして」と思い始めているってことですかね。自分たちが楽しんでるだけじゃダメって意識が生まれてきているのかもしれない。

mo　確かに、見てる側は無料ですけど、配信者側は見られたことによって収益があるじゃないですか。だからそこは無料って思わないかもしれない。

む　向こう側から見たらギブアンドテイクは成り立ってるってことなんでしょうね。こちらとしては無料で見させてもらっているので、全然成り立ってないんですけど（笑）。

mo　そこが噛み合わないとこなんですよね。ファンの想いと配信者と。

む　でも、ここではそれが当たり前なんですよね。噛み合ってないのは別の界隈からきたからというだけであって（笑）。
　多分、YoutubeのスパチャとかTwitchのチアーを、そういう用途で使ってる人ってあまりいないんですよ。

mo　確かに、スーパーチャットの用途(※)として正しく使ってる場合が多いかもしれない。
※スーパーチャットの用途：本来はコメントを目立たせて配信者に読んでもらいやすくするためのシステム。

む　そう考えると別ベクトルの話じゃないですか。もらってるものに対してというよりは、発起点が正しい用途として使うためというか。

mo　見栄えとしては同じに見えるけど、込めてるものは違う。

む　だからギブアンドテイク成り立ってないよっていう違和感というか噛み合わなさは、多分その人たちにはなくて当然で。ニコ動をはじめとして、当たり前に映像が無料であることに馴染み深い人たちだから。

mo　違和感を感じてるのが別の界隈から来たこそっていう話だと、私たちにとっては自分が払う額が重要になってくるじゃないですか。たとえばチケット代が、その金額に応じて席配置が変わるものでもあったりしますし。でも、無料コンテンツの純粋なユーザーにとっては、払うというワンアクションが重要。

む　私たちは気持ちを額で見ちゃうけど（笑）。

mo　本来ここでは、やってるかやってないかだから（笑）。

む　別に、本来の用途として使って目立ちたいわけではないんですけどね（笑）。

mo　あと若手俳優界隈と比較して考えたとき、コミュニケーションの形がすごくいびつだなと思うんです。Youtubeの形態がそもそもそうなんですけど、いびつというか「コミュニケーション」のそもそもの捉え方が難しい。
　俳優とファンの関係性だったら提供者と消費者で明確な線引きがあって、コミュニケーション取らない・個の認識がないからこそファンとして好き勝手言えることもあるし、俳優側もそういうもんだと認識するじゃないですか。
　でも、ここではそうじゃない。基本的には、もちろん配信者と視聴者のラインがある。だけど、視聴者側が発信をして、それに対して配信者側からのリアクションがあって……が比較的頻度高く行われるから、それをコミュニケーションを取ることもできる。そのコミュニケーションはリアルの友だちや家族との関係性とは明らかに違う形だけど、でも人と人との関わりであることに違いはない。なのに、普通の人付き合いだったら配慮することをスルーしてしまってるのかな、そこがうまく噛み合ってないのかなって思うことも稀にあって。

む　視聴者側からは見えないけど直接伝わってるし、みたいな。

mo　 そう。たとえば、私の推しって、代々絶対にひとり反省会するタイプなんですよ。だから、そういう彼にどうしても伝えないといけない何かがあるとしたら、SNSとかではなく事務所を通してひっそりと伝えるってやり方を考える。彼が商品として勝負する場所で提言したことが彼の目に入れば間違いなくひとり反省会案件だし、公に言えば言うほど彼はどんどん保守的になると思うので。まあそんなことやることないですし、基本はファンの一言を気に留めないのが彼なんですけど。
　とにかく相手にコンタクトを取るときは、リアルの人間関係と同じように、自分なりに相手のパーソナリティを配慮をして発信するかしないかを選別するじゃないですか。もちろん、彼をよく知らない場合でも、相手がそれを見ないかもしれなくても、その発言を相手がどう捉えるかを考慮する。

む　自分が個として認められている、それがダイレクトに伝わると意識していないだろう発言もままあるのがいびつの一つですよね。まあ年齢層の違いというか、大人ばかりの若手俳優の現場と違って、こっちはユーザーが大人だけではないというのもひとつ理由でしょうけど。

mo　そう考えると、コミュニケーションではなく、テレビの人に話しかけてて、それが偶然返ってくるみたいな感覚、ステージにいる推しと目が合った、みたいなのがより分かりやすく、頻繁にあるだけの感覚なのかな。ファンサの一環というか。

む　それこそニコ動とかで匿名で投げてるとのあまり変わらない感覚なんですかね。やっぱり育ってきたところが違うとやっぱり違う、セロリ現象(※)……。
※セロリ現象：山崎まさよし『セロリ』の歌詞のごとくセロリが好きだったり嫌いだったりするのは、その人を取り巻く環境が違っていたら当たり前だよね的現象。

mo　あの場所を、人と人とのコミュニケーションと捉えるほうが異質なのかもしれないですね。そのスタンスからしたら。

む　分からないカルチャーではありますけどね。多分「認知(※)されること」が持つ意味が「嬉しい」のみだからですよね。それによる弊害とかじゃなくて。認知によってワンステップ上がれるみたいな。
※認知：様々な定義があるが、ここでは「個人」として認められること。

mo　若手俳優の界隈だと、推しに認知されると義務感が生じるみたいな話も出てきますもんね。どっちかっていうと私たちの感覚はそっちのほうが近くて、個として認められたときに、たとえば自分が現場にいないことが相手に対してどういう影響を与えるかとか、人と人との付き合いとしての考えが生まれちゃう。

む　だから認知を求めてないんですよね。私たちの個としての行動が重たくなる。

mo　好きなように好きなだけ見てたいし。推しのことをオペラグラスでずっと見てることがバレたくない（笑）。

む　ブログという文化があるかないかの違いにも通じてきますよね。ここでは直接本人たちに対して発信できるじゃないですか。それが伝わっているという認識もある。でも若手俳優界隈ではそれはできないしやっちゃいけないことで、でも発したいという気持ちは一緒。そのどう伝えるかの手段が、たとえばはてブロになるだけですもんね。

mo　それが手紙でありプレでもありますもんね、私たちにとっては。別にここではそうしなくても伝えられるし、なんだったらツイッターも見てくれることもあるし。

む　勝手に壁打ちで投げてても、個別に発信しなくたって見てもらえることも往々にしてあるし。

mo　そしたら贈るプレの種類も確かに変わるかもしれない。

む　そう考えると、ここにおけるプレはどういう意味を持ってるのかな。俳優界隈では、私たちはプレは必ず使われるものだと思って贈ってないもの。使ってほしいから贈ってるんじゃなくて、たとえば「今日きたよ」「ここにいるよ」っていう意思表示かなと思いますけど。

mo　それと同時に、渡すものがイコール自分になる。基本的にそれ以外で自分を相手に向けて語る手段がないし。その人がどういうものをチョイスしたかによって、どういう人か伝わっちゃうものみたいな。

む　理解度も図られる。でもここでは、プレ以前に個を認識されているという自覚もあるし。
　だから、行動としてやること、中身じゃなくてイチが大事。その考え方はすごく納得しますね。プレであれスパチャであれコメントであれ、すべてそう。だから、たとえば私みたいな「挨拶しか来ない・コメントしない・金だけ払う・ロム専」の人が、もし認知されていたとしたら端から見て「なんで？」って要素にもなると思う。

mo　イチをやってない人に見えるのか。

む　多分、対価になってない、参加してないと思う人がいるんじゃないかなって思います。
　そう考えると「最近コメントできなくなっちゃったな」っていうのをみんなが重荷に感じるのも納得がいきますよね。それがその世界の中で普通なものという認識があるというか。

mo　私たちで言うお金払ってるかどうかと同じようなものですもんね。

む　すみません、馴染めなくて……と言うしかないですねそれは。

mo　私は馴染む努力はしてきたつもりでいますけど、正直、若手俳優の界隈で同じことやってたらバチクソ叩かれると思うので未だに戦々恐々ですね（笑）。

む　私も多分俳優の界隈だったらmofuさんと仲良くしようとしない。一緒にいるだけで大変な飛び火じゃないですか（笑）。

閑話――推し活動と価値観・仕事観

む　でも普通に考えると、こうやって話す相手がいなかったらこんな風に色々なことを考えないことが当たり前かもしれないですね。あのとき(※)私はこうなることを察知してmofuさんに声かけたわけじゃないですけど。
※あのとき：2018年12月頃、mofuがTwitter上でリアルに飲んでくれるミナツドリスナーを探していたところに名乗りを上げてくれたのがむらばりさんでした。

mo　私自身、若手俳優の界隈でもこういう関係性ってあまりなかったなって思うんですよね。
　俳優を一緒に追いかけるときって、金銭的な感覚とかどういう仕事をしてるかとかが人付き合いに結局関わってくるなと思うんですよ。金銭的にもある程度対等でないといけないし、趣味の比率も同じようじゃないといけない。一緒に舞台に行く回数にも、（遠征の時に）泊まるホテルとか何食べるかとかにも関わってくるから。

む　仕事忙しくて行ける暇がない、とかだと温度感がズレちゃいますもんね。

mo　そうなんですよ、どっちかだけが現場に通うとなると情報の格差も出てくるし。最初のほうはそれでも共有できるし、別に常に一緒に行動する人とかじゃなかったらいいんですけど。

む　確かにそれはあるかも。オタクとは関係なくても、友達付き合いとかで、二杯目に水って言われたらこの人と仲良くなれないなと想いますもん。

mo　価値観的なものが合わないとダメですよね。たとえば舞台を見て「推しはこうだったね」って話しかされなかったら私はダメなんですよ。推しのことしか見てない人は、ずっとは付き合えない。考えてることとか話せる内容とかも関係あるなって。

む　やっぱりそこ気づいてた!?みたいな。

mo　そうそう、やっぱりそういうのがないと難しい。結局、普通の友達でも、同じような業種の人だったり、同じようなスタンスで仕事をしている人としか付き合わなくなるのと同じだなって。

む　同期とかでも「平日何時から何時まで働いてればいいや」ってスタンスの人とは話が合わないですからね。こっちが一生懸命話したって、話しごたえがないというか手応えを感じられないので。着眼点が同じというか、気づくポイントが一緒じゃないと。

mo　そしてこのふたりが合致してしまったがゆえに、この世界での違和感が大きくなるという（笑）。

む　最近、仕事で自分が何ができていないか分からない、他の人と何が違うのか分からないって悩んでる子と話す機会があったんですよ。
　その子に「たとえば目の前に10万のパソコンと30万のパソコンがあったとしたらどっちを買う？」って聞いたら、「特に何も考えずに10万のパソコンを買う」って言ったんです。もしかしたら30万のパソコンのほうが１万あたりの価値はあるかもしれないのに、必要最低限のことができれば10万の方だけでいいって言ってて。
　その場にいたもうひとりが「30万のパソコンの機能がどんなものなのか気にならないの？　自分だったら書いてなくても調べるし、納得をするまで質問をしたい」て言っていて、私もどう考えてもそっち派なんですよね。じゃあ「会社から50万渡されて好きに使っていいよて言われたらどうする？」って10万の子に聞くと、「それは30万の方を買う」って答える。
　なるほど、そういうミニマムだけを知っていればいい人もいるのかと思って。多分そういう「疑問を持つ」という習慣がそもそもない人たちが、世間には多いのかもしれないなって気付いたんですよね。

mo　「自分がそれで何をしたい」「こういうものを求めるからこういうものがほしい」っていうビジョンが私たちの場合は先にあるけど、そうではないんですよね、多分。

む　目的が明確か、どれだけ手を尽くしたいか、目的を充実させたいかという捉え方が私と違う人がいるんだなって思いました。その認識の違いによって、こちらがわの関わり方も変わってくるじゃないですか。
　でもよく考えたら、そういう人たちっていっぱいいるし、それが悪いことなわけじゃない。与えられた情報を素直に受け止めているだけだから。でも、私たちは「人がなぜそう言ってるのか」「本当にそう思ってるのか」を考えるじゃないですか。

mo　疑り深いとも言えますけどね（笑）。
　たとえば配信者さんって、我々の界隈では秘匿されるような自分のことを自分から話す人も多いじゃないですか。だから与えられる情報だけを拾っていれば、何となくの人物像は掴める。
　でも実際それは本人にとって知られてもいい情報の場合の方が多くて、既にある程度のフィルターを通ったものだから、私たちが言うパーソナリティを掴むためにはその情報からなにかを汲み取らないといけないし、その情報を使って自分たちが何かを発信する場合でも、それが本人の意図した発信と食い違ってないか、本人や周囲にどのような影響を与えるかを考える。……し、私たちはそういうことを今までも日常的にやってきたけど、そういう素直な人たちにとっては必ずしもそうではないですよね。

む　確かに「この間こう言ってたな」って蓄積さえあれば情報は得られるけど、それは字義どおりでしかないものですもんね。
　自分の話をよくする人って、行間に本質が詰まってるタイプも多いじゃないですか。逆に思ってないことを先に口に出しちゃうとか。

mo　そういうタイプにとっては、ある意味狙いどおりというか、本人が取ってほしい通りにとってくれているという意味ではありがたい相手ではあると思いますけどね。
　私もよく自分のことをキャスで話しますけど、かなりフィルタリングはしているし、実際そういうキャラクターに見られたいからそうしてますし（笑）。

む　とすると相手のことを「知ること・分かること」が、素直な人たちにとっては与えられたものを字義どおりに「理解する」という意味なんですかね？

mo　私たちが思う「知る・分かる」が、その言葉の裏に隠された本質を掴むことだとするなら。

む　納得しました。でも、そういう考え方の人が一般的にも結構多いんじゃないかな。でもそれだと仕事辛いんじゃないかな。とりあえずやんなきゃいけないからやる、みたいな。

mo　仕事の捉え方が違うんでしょうね。
　でも、純粋な疑問として、私たちにとっては仕事は自分たちの価値を高めるものだし、それを通じて得たお金を推しに払うのも人生の価値じゃないですか。逆にそういう価値観しか知らないから、そうでない人たちが人生の価値をどこに置くのかは知りたいですよね。オタクが「オタクじゃない人は何にお金を使ってるのか分からない」って自分目線で言うのと同じ話なんですけど。

む　まあオタクという定義も違いますからね。好きであるがイコールみたいな。

mo　一般大衆化したオタクですね。

む　オタクって世間から卑下される存在だったのに、いつからかあまりにも人数が増えすぎて「他と違うなにかを持った人」という存在になっている感じがして。

mo　ステータスですよね。

む　しっかりなにかに没頭できる人みたいな。オタクという言葉が憧れの対象になっている。その場合の没頭が、時間で図られているのか、自分の中での相対的な気持ちなのかは分からないですけど。

mo　自分の中での相対的……他者と比較する機会がないのか。

む　多分日本って、競争の中で生きられる機会が少ないんですよ。
　私が社会人一年目のときに先輩に「世情がまだ君たちの味方をしているけど、いまの新卒のみんなは世情が変わったときには誰も売れないよ」って言われたんですよね。

mo　仕事をすることが、その業界でのみ生きる技術やスキルを身につけることとイコールになってると、社会での競争は必ずしもしなくてもいいというか。自分の人となりを磨いて、他の業界でも活躍できる人になる、ということが業種によっては求められないことも当然ある。

む　そういう意味でも他の業界の人の仕事の話を聞くのが好きなんですよね。ちょっと話をすると、どういう気持ちで働いているかとかわかるじゃないですか。

mo　人となりというか、その人の人生観が出ますもんね。

む　どういう人が周りにいる環境かっていうもの関係ありますしね。

mo　最近「転職がしたい」って話をよくするんですが、友達にどう説明しても「だって仕事ハードだもんね、辛いもんね」って結論になるんです。そうじゃなくて自分の資質とか人間性が合っていないなと感じているからなんですけど、仕事観・価値観によって得られる答えがまったく違うなって思って。

む　私たちは、条件で仕事を探しているわけじゃないんですよね。週休●日の会社とかドアドア１時間とか、そういうことじゃないんだよっていう。
　でもそれは自分の価値の比重をどこに置くかの違いだし、そういう考え方が必然の職場もどうしてもあるんですよ。会社の上の価値観によって、そういう形で仕事を捉えてる人も多いだろうし。

mo　私たちの働き方においては、上の人が持つ理念って大事だなって思いますもん。上の人の言うことに共感できる、感動できることが何より重要ですよね。

む　会社のトップを尊敬できないと。たとえば社長のすごさって、一般社員からしたら分かりづらいじゃないですか。でも「社長ってすごいんだよ」って言葉をナンバー２、３の人たちから聞くと、社長のすごさも分かるし、その人たち自身のことも尊敬する。
　だから、そういう偉い人との飲み会って大事だなって思うんですよ。機会を作らなきゃいけないし、一般社員が作れないんだったら上の人が作らなきゃいけない。

mo　でも、仕事に価値の比重を置かない人からはそういう考え方がシンパみたいに見えちゃうからその温度差を埋めるのも難しいんですよね。

む　そうなんですよね、別に盲目的に信じているわけじゃないんだけど。

mo　思想とか理念とかの要素だけで盲目的になるってことはないというか、共感できるかどうかの話だけで。他の具体的なすべてを全肯定しているわけではないはずなんだけど、全肯定に見られてしまう。
　尊敬云々は推しとも通じますし。

む　確かに。推しへも尊敬はありますよね。ミナツドの場合は、本人たちも敬意というものを大事にしているのが分かるからこそ、私たちもなおさら。
　ジャンル限らず貶し愛(※)とかがパフォーマンスとしてあるのは分かりますし、私も盲目的なわけではないから推しにダメなところがあるのは分かるんですけど、そういう手段を取るときに推しへの敬意はあるのかなって。
※貶し愛［けなしあい］：推しをディスることで愛情を表現する手法。

mo　本人たちなりの、という自分基準ではあるのかもしれないですけどね。
　あと、共感できるトップの人たちって、周りの人たちをよく見ていたり、どれだけ立場が違っていてもそういう人たちを尊重して考えてくれているからこそ、思想や理念に共感できるスタートラインにいるんだと思うんです。
　そう考えると、ミナツドが周りを尊敬しているというのが目に見えて伝わってくるのも、彼らの作品を好きと感じて、応援するようになった要因のひとつでもありますよね。

若手俳優のオタクから見た『ミナミノツドイ』

mo　そんな彼らの魅力について、そろそろ触れますか？（笑）

む　そうでした！（笑）
　私は組み合わせによって変わる、人間性・人間味のある部分がいいなと思います。
　あと、「自分たちの好きでやっている」というスタンスがあるとはいえ、パフォーマンス的な一面もあるじゃないですか。そのホスピタリティが何に向かっているのか分からない感じは気になるなと思いますね。あんまり視聴者を意識してはいないはずなに、謎に楽しませようという意識はある。それは元々の学校でみんなが笑ってるのが好きだったからなのかな。笑わせるのが好きだった人と、一緒に加わることが好きだった人が揃っているという構図が見て取れるというか。
　学校で彼らを見てた人たちが全国の20万人になっただけの話。そういう謎のパフォーマー体質を感じます。

mo　あーそういうことかもしれない。
　私は、自分たちのために作ることに拘っている一方でその感性が20万人の興味の対象になっているのは、楽しいことに強い関心があるがゆえの感度の高さからなのかなって考えていて。だから自分が本当に面白いと思っているものが、最終的に世間の面白いこととイコールになっていく。そういう感度の高い人たちなのかなと思ってたんですけど、そういう風に周りを見ている人たちでもあるのか。

む　だから自分が楽しければいいと言いつつ、コメントを気にしている様子がある。もちろん、そういう反応は活動していく上で気にしなければいけないものという前提もあるんですけど。
　ムードメーカーの人って周囲の顔色とかをよく見てるじゃないですか。そういう人たちらしい楽しませ方をしてくれているように感じる。
　まあ本来であれば、こういうことって他者が分析するものでもないし、本人たちもされたくないと思うんですけど、私はそういう楽しみ方を見出してしまうというか（笑）。でもこれは大衆受けするミナツドのいいところじゃないな。

mo　でも、分かります（笑）。
　私が思う魅力は、最初に言ったように推しは素晴らしいものを提供してくれるクリエイターであることが前提なんで、作っている動画が単純に面白いっていうのが一番大きいんですが。
　それはまあみんな知ってるから別の観点で考えると、むらばりさんが言ってたムードメーカーであることも、結局「社会人としてのスキルの高さ」だなと感じていて。空気を読んで周りを楽しめてるかなって気にするっていうのも、さっき言った周りを尊敬するっていうのもそう。
　そういうのって大人なら誰でも持っているありふれたスキルに見えるけど、実はそうじゃない。俳優やアイドルは仕事としてやってるけど、日常の中で、そういうことをナチュラルにできてしまう人たちって現実では分野問わず多くはいないと思うんですよ。さっきの「知る・分かる」の受け止め方と一緒で。だからこそ彼らのそれが引き立つんですよね。
　仮に６人の中にそういった社会性がないと言われる人がいたとしても、多分、社会性の水準は高い。そういう社会人として正しい姿や尊敬している・敬意を払っている姿って見ていて気持ちいいなって。

む　あと、自分の推しポイントとつなげて考えてみると、突拍子もない展開とか破天荒な中にも、企画の緻密さはあるじゃないですか。本人たちのキャラクターゆえにぼやっとしているけど、実は企画自体がとてもしっかりしているというか。そこの緻密さがずるい。

mo　緻密は緻密でも、難しいとか複雑とかの緻密じゃなくて、あくまでムードメーカーとしてみんなが楽しめるような構造をしている緻密さなんですよね。

む　それをバクステとかでも垣間見せてくるから私の知りたいような裏と表が見れてしまう。そこがずるいなと思いますね。本人たちが意図せず起こることのほうが多いと思うんですけど。
　そういうことが 自然とできるクリエイター気質な人と、バランスを整える人と……みたいな全体バランスがいいですよね。あと、それがどうであれ関係なくいてくれる片栗粉みたいな人とか（笑）。

mo　あと、それぞれ形は違うけど、ひとりひとりのビジョンや想いがはっきりしていそうなところも好ましいというか。さっき出ていた新生ミナツドの動画は分かりやすいですけど、Tつぐさん、まっちゃんさん、MくんさんのTwitchやケイタさんのツイキャスとYoutubeの棲み分けにもそれを感じ取れる気がしていて。Twitchにしろツイキャスにしろ各々違う形でミナツドではやらないこと・できないことをやっているというのは、多分６人それぞれがミナツドへ抱くものも違うということでもあると思うんですよね。そういうものをそれぞれ干渉させないながらも、まとまって大きくなっていけているのはすごいなあと思います。

む　最終的にはソロプレイヤーにもなりうる要素はありますよね。全員がソロ配信をやろうと思えばできる。

mo　無理やり誰かに合わせようっていうこともないし、自分はこう思うっていうひとりひとりの考え方がちゃんとあって、それを尊重しあえるからミナツドができてるんだろうなって。

む　どの組み合わせをとっても、多分ミナツドの今後の話ってできるじゃないですか。「今後の話をするにも誰かがいないと進まない」ってことがないんじゃないかなってくらい、それぞれがそれぞれの視点でなにかを見てる。

mo　ほんと、リーダーがいないってのが主体性がないんじゃなくて、個々として独立している。そういう人たちがみんなで教室でわいわいやってる感覚なんですかね。

む　しかも学生時代でさえ６人は揃ってないですからね。でも誰しもが不可欠だし。

mo　多分対外的に見たらKCさんがやっぱり表に見えてきやすいし、ミナツドの色っていったら私も初見はそうだと感じたから、そこから推しになる人が多いんでしょうけど、占めている割合としては誰が欠けても難しいバランスだなって思いますね。

む　それがまず同じ高校に集まったのがすごい。

mo　でも自分の学生時代を思い起こしてみると、確かに目立っていた人たちっていうのはそれなりにいましたよね。そういう人たちは、学生時代にはつるんでなかったかもしれないけど、大人の常識を携えて「こういうことやりたい」と思っていざ集まったときにミナツドみたいな形になるっていうのはちょっと分かるというか。でも、学生時代にはそうはならない。

む　あのときのわくわく感と大人である現状を合わせれば、すごいことになる。

mo　という意味ではすごい夢がある話とも言えるなって思います。

む　この間改めて母校建築(※)を見直したんですよ。そこで言ってる「ここで鬼ごっこしたいね」とか「ここで戦闘的なことできたらいいよね」とかを「でもそれは難しいか」で閉じてたのが、全部後のちに実現してるじゃん！っていう。そこから、どういうルール組みにしたら成り立って、ちゃんと面白くなって盛り上げられるのかって考えられているのがすごいですよね。
　いま話してて思うのが、ミナツドって企画力をかなり見られているじゃないですか。彼らの企画で有名な動画とか、彼ら発案の企画動画とか、そういうのも一大コンテンツだけど、配布ワールドとかでも見ていてちゃんと楽しめる。それこそ企画による面白さだけじゃなくて、本人たちのパフォーマンスとしての楽しませもできるから与えられた場でも面白いものが作れる。どっちもあるじゃんっていう。そりゃ企画ものがなお面白くなるわなって。
※マイクラで母校を作って同級生300人呼んでみる!?【母校建築 Part1】 youtu.be

mo　最近だと宇宙生還クラフト(※)で既存のワールドに「一つの世界観をプラスする」みたいな、ありふれた既存品でも何か一個工夫があったら面白くなるなって思いつくし、その工夫がなくてもひとりひとりがパフォーマーだから成り立ってしまう。それをさらに面白く見せる編集の力もあるし。
※【マイクラ】宇宙でトラブルを起こしたので宇宙人と戦います。Part1【宇宙生還クラフト】【Totality】 youtu.be

む　編集の力は大きいですね。それこそゴルフ(※)とかだってゲームの構成としてはやるだけなのに、誰かしらが見せ場を作れる。
※【バカゲー】みんなで異世界に行って競争！[前編]【Golf With Your Friends】 youtu.be

mo　こうやって普通に話していても話のオチができてしまうんでしょうね。普通に、人間性として人を楽しませられる資質がある人たち。

む　撮影の裏段階でオチつけられちゃってますしね。それを意図してやっている人もいるだろうし、意図せずの人もいるだろうし、どちらでも誰かしらに受けるし。

mo　ポロッとした些細なことでも周りが面白くできちゃってますしね。

む　そういうちょっとしたことを面白く掬い上げるのは、ケイタさんがうまいですよね。だから多分ボケる側から好かれる。

mo　滑らせない、もしくは意図して滑らせる。とにかくネタや笑い話に転換してくれるというか。

む　６人の役割が明確ですよね。

mo　全員がボケだったら大変ですしね（笑）。

む　ツッコミ側のスキルも高い。

mo　それに関しては、興味をもって対象を見るスキルが高いんだなと思います。もちろん長年付き合っているからだとも思いますけど、どれだけ長い関係があったって、本質には気づかない人だっているじゃないですか。

む　みんな基本的に頭がいいんですよね。

mo　頭がよく、人間的なスキルが高い。頭の回転を気遣いとか周りの空気感にも回せる。

む　そういう社会人的な人間力も惹かれる部分ではあります。

mo　そして、話が戻りますけど、そういう意味でもてんてんさんを筆頭にコラボで外に出ていくのはどんどんみたい（笑）。

む　本当に見たい～！

mo　役割としてミナツドの中ではキャラが決まってるから、人によってはそういうスキルってなかなか見れないとこですけど。

む　てんてんさんに関してはこの間のラジオ(※)緊張云々の話とかちょっと出ちゃってますけどね。
　でも、そこがそうなったら、また他でバランスが変わって、こっちがこうなって……ていうのが出てくるだろうなって。
※【みなつどラジオ】第４回「平成最後の７人集合」【トーク】 youtu.be

mo　ひとりが変わってもうまくバランスも取れちゃうんだろうなとは思いますよね。

む　６人全員で質量保存の法則みたいな（笑）。

mo　確かに、結果だけ見れば同じだけど、みたいな（笑）。

む　だけど、バランスが違うから同じ感じはしない。

mo　そういう意味でも見続けていないと変化がどんどん起きてきてしまう可能性があるグループですね。

む　目が離せないって感じですよね。すげえ。ミナツドはすごい。

mo　ミナツドはすごい！　というわけで、おあとがよろしいようで（笑）。

後記／mofu

　およそ4時間に渡る会話をなんとか3万字以下に収めたのでやたらと駆け足な内容になったことは否めないが、いつもこのような形で、ミナツドを軸に様々なことを話しながら酒を飲んでいる。
　はてさて今回、印象深かったのはやはり「推しとファン・オタクとの関係性」というトピックだ。
　まず改めて誤解のないように伝えておきたいのだけれど、課金ベースの世界で応援をしてきた私たちだが、この界隈がそうではないことは重々承知しているので、他のリスナーさんと自分をその考え方で比較することは一切ない。（それはむらばりさんも同じだと思う。）
　若手俳優の現場の尺度でしか推し活動というものを測ったことがないから、「自分のために」その尺度を別の界隈に持ち込んでいるだけだし、むらばりさんも言っていたけれど、ぶっちゃけて言えば「自分の気が済まないから」やっているだけだ。この価値観の違いに関しては、我々の違和感ではあるが、じゃあそれに合わせて自分の応援スタイルを変えるかとか、あるいは他に自分の価値観を押し付けるかとか、そういう考えはないし、好き勝手することに戸惑いも躊躇いもない。
　だが「関係性」においては、未だに驚かされることが多い。分かりやすい例でいうと、このブログがご本人たちの目に触れているらしいという話だろうか。
　考察や感想などをブログにまとめたり、SNSに思いの丈をぶつけたりすることは、若手俳優の界隈でも、私を始めとした多くのオタクの日常である。だが、そこで例えば俳優本人が私のツイートにリツイートでもいいねでも何か反応を示そうものなら、その現場が別のオタクにスクショされ、ツイートされ、拡散されていくほどのちょっとした事件（笑）に発展するものなのだ。
　そういう我々俳優オタクにとっての非日常が、この世界では日常的に行われ、それをリスナーも日常的に受け入れている。それは、未だに私たちにとっての異文化の衝撃である。
　過ぎるほどに敏感な自覚はあるが、だからこそ、普段からSNSを始めとした自らが発信者となる媒体において、常に最大限の推しと他者への配慮を忘れないよう心がけていて（心がけているつもりではあるが、自己評価でしかないのも確かである）よかったと感じざるを得ない。
　気軽さゆえに忘れがちになるが、こうしたブログもSNSも特別な設定をしていない限りは、全世界に対してオープンなもので、それを前提にクリエイターもオタクも常に（伏せ字や「匂わせ」を含めて）エゴサーチ・パブリックサーチをしているものである。世の中にはリツイート後にその人がどんなツイートをしたのか見られる便利なシステムだってあるのだし（まじである。検索してみてください。）、それができる環境に私たちの言葉は常にさらされている。双方向的なコミュニケーションのある関係性が築かれる界隈ではなおのこと、そのことを頭に置いておいて損はないんだな、ありがとう普段の私……と改めて自分に感謝した。誰しもがそうだと思うけれど、私は自分の推しの不利益になることはとにもかくにも避けて生きていきたい。
　そしてもうひとつ、「ミナツドの表と裏」の話題も私にとっては非常に印象深く、興味深い話題ではあったのだが、これ以上は長くなりすぎてしまいそうなので、また機会を改めて話をしてみたいと思う。

　というわけで唐突にまとめに入るが、陳腐な言い方ではあるけれど、私も彼女もミナミノツドイが好きである。けれども話をしてみると、彼女のような価値観の似通った同志だったとしても、彼らに向ける視線や想いは私とは違っていた。
　きっといま、そんな風にして、20万通りの異なる視線や想いがミナツドに注がれている。それってめちゃくちゃ面白いじゃないか。だって、こんなにミナツドを語り合ったって、私が知っているミナツドの魅力は20万分の1でしかない。まだ私の知らない彼らの魅力があと199,999はきっとある。
　こうした感覚は、Youtubeがクリエイターにもユーザーにも限りなく開かれたメディアでありプラットフォームであるからこそより色濃く現れるのだと思う。チケット代を払うことがコンテンツを楽しむ第一条件の世界とは違って、この界隈に垣根はない。もちろんユーザーのコアとなる層というのは存在するだろうが、スマホやPCさえ持っていれば誰しもがコンテンツに触れられる環境がある。だからこそ、多様な価値観を持った人たちがここにツドい、そして、私が好きな彼らを「好き」でいるのだ。
　彼らはこれから先、きっともっと大きくなる。私の知る彼らの魅力は、やがて50分の1となり、100分の1となっていく。そして、私はその分だけ、色々な価値観に触れながら彼らの新しい魅力を発見していけるに違いない。いや、オタクの欲目かもしれないけれど、大目に見てほしい。だって、私はミナミノツドイが作り出す動画がめちゃめちゃ好きだし、クリエイターである彼らのことを尊敬しているし、それに、私の「推し」はいつだって私の想像を超えて、人々を揺るがし、大きくなってきたのだから。